オーディオ加工の技術が進歩しすぎて、楽器演奏の技術が激しく退化してしまった件

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昔から自宅録音で曲を作るということを長く続けていたので、いろんな楽器に触るようになりました。ですが実は、楽器の演奏技術は技術の進歩に伴ってどんどん退化してきています…。今日はそんなお話。

実は「録音する」だけならにそんなに演奏技術は必要ない

昔は、録音と言えばテープメディアだけ、途中で歌や演奏を間違えたら最初からやり直し…みたいな一発勝負の時代もありました。ぼくもギリギリその世代から音楽作りを始めています。録音する時の緊張感ったら半端なかった。

だがしかし。今時のデジタル録音、本当にいろんなズルが容赦なく出来てしまいます。例えば…

演奏のうまくいった部分をつなぎ合わせてひとつの録音とする。

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何回かテイクをとっておき、うまくいった部分を切り貼りできます。

上の例では、真ん中の「テイク5」っていうのが全体的にはうまくいっているのでこれを使いたいんだけど、一部微妙なところがあるんだよね…というとこだけ別テイクから持ってきています。実際は青く塗られた部分のみが再生される仕組み。これのおかげで、演奏時の緊張感は格段に少なくなりました。何回か通しで弾いておいしいところだけ繋いでしまえばいい。あと、上の例ではやっていませんが1番でうまくいったテイクを2番にコピーとか、常套手段です。

このテイクのつなぎ合わせ自体はテープで録音している時代からよく行われていました。ですが今ほど簡単に「このワンフレーズだけ!」とか「この1音だけ!」とかいう芸当はかなり難しかったので、基本は前後も弾いておいて切れ目を探すような感じ。

・タイミングや音程がズレた箇所を修正する。

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こちらはここ何年かで一般的となった、デジタルならではの強烈にずるいテクニック。

上の写真はボーカルを録音したテイクを表示させていますが、音程とタイミングを自動解析し、MIDIのピアノロールのように表示してくれる機能。これのハシリはMelodyneというプラグインですが、CubaseにはVer.5から、LogicにもXで標準搭載されました。画像の四角い部分をドラッグすると音程もタイミングも音の長さも、それぞれ自由に動かすことが出来ます。おっかないぐらい自然です。

極論を言えば、歌詞さえ間違えなければ、メロディもタイミングもすべて適当に歌っても、あとから全部正しい歌に修正できてしまうということ。ずるい。ずるすぎる。

もう、ここまで簡単に出来すぎてしまうとありがたみがない

こうしてぼくは、よく言えば効率よく、悪く言えばずるく演奏を録音するテクニックを積み重ねていったのでした…。

ひとつだけ言い訳をすれば、仕事としての曲作りもしている手前、少ない納期で納品物のクオリティを上げるという意味でこうした技術はとても役に立っていますし、制作時間が短くなればその分他のことだって出来ます。また、こうした編集技術を逆手に取った音作りというのもやってみると面白い。

ただ、ここまであまりに簡単に修正できてしまうと、もう「うまい演奏ってなんだろう」ってことになっちゃう。

それが聞いて気持ちよいものであればいいんですが、正直ここまで修正できることを知ってしまった段階で、世にある(特にポップス領域の)録音演奏がつまらなく感じてしまうのもまた事実です。

あるいは逆に最初から「完全に打ち込みですよ〜」みたいなものの方が気持ちよく聞けるなーと思ってしまったり。そういう意味で実は最近テクノばっかり聞いてます(笑)。

ぼく自身打ち込みによる作曲を20年近く続けていますが、やり直しなしの一発録りであることとか、その裏側に流れる緊張感、人間味みたいなもの…そういうのってもしかしたら「コンテクスト」の部分だと思うのですが、そういうものが味わい深いなーと感じるようになってきた昨今です。完成した「音楽」そのものを楽しむのか、あるいは音楽を表現しようとする人の「人間味」みたいなものを楽しむのか、それぞれとは思いますが、その振り幅や落としどころは曲を作る時にしっかり持っておきたいものです。


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